薪ストーブが欲しい。ペレットストーブでもいい。
毎年、冬になるたび筆者が願うことである。なにしろ家が寒いのだ。
薪ストーブの火力ですみずみまで部屋を温めたい。
近所の薪ストーブホルダーのおじいさんは「火力がすごくて家が燃えるかと思う」とさえ言っていた。家が燃えたら燃え残った廃材でまた薪ストーブを燃やせばいい。力強く筆者は言った。
今年の筆者は願っているだけでは終わらなかった。薪ストーブ屋さんのブログをブックマークして愛読さえした。
薪ストーブの導入で助成金がもらえる自治体のリストも読み込んだ。
しかし筆者には大きな障害があった。
賃貸なのだ。
工事をしぶる大家さん、煙や匂いへの近隣住民の苦情。生半可なことでは太刀打ちできない相手である。
それに、薪ストーブは高い。
それでも憧れる薪ストーブ。電気を消した暗い部屋でオレンジ色の炎を見つめる。なんて落ち着くひとときだろうか。
そんなある時、筆者は家電量販店に足を運んだ。
店内をうろうろしていると、展示品や在庫わずかの暖房類がセール価格になっていた。
筆者の家のヒーターはいつ買ったものか忘れてしまったが、灰色だった見た目がやや「ラクダ色」になってきたし、コードを猫がかじってしまった。
スイッチをつけたばかりなのに、人の目を盗んで勝手に消えるといった反抗的な面も見られるようになってきた。
そんなヒーターのことを思い浮かべつつ、各ストーブの性能の違いなんかを見比べているうち、ついに筆者は「コイズミ」の遠赤電気ストーブを買うことに決めてしまった。
縦長で、在庫のダンボールを抱えると案外軽い。
台座を本体にくっつけるという簡単な作業は必要だったが、家に帰ってものの3分くらいですぐに使い始めた。
スイッチをまわすと即、カーボンヒーターがオレンジ色に灯りだした。
薄暗い冬の室内でオレンジ色のあかりを見つめていると、心が落ち着くようだった。
薪ストーブの本物の火でなくても、カーボンヒーターのオレンジ色でも人は落ち着くことができるのか!
思わぬ発見だった。
永遠に終わりが見えないかと思われた筆者の薪ストーブ、そして火への憧れ。
それがまさか、セールで買った1万円のストーブにより、一定の満足を得ることができるとは思いもよらぬ展開であった。
まさに人生はドラマ。そして主役は電気ストーブである。