映画「エルヴィス」を見てきた

映画「エルヴィス」は世界的人気のロックスター、エルヴィス・プレスリーと、キャリアの初期から彼が42歳で亡くなるまでマネージャーをつとめ上げたトム・パーカー大佐に焦点をあてた映画である。

 

この手の映画は、本物顔負けの圧巻のライブシーンをふんだんに見られることが目玉なので、その時点で長尺映画になることは確定しているが、その駆け抜けるような生涯の、メンフィスの黒人の多い地区で育った幼少期、ゴスペルコンサートに通い黒人たちのソウルフルな音楽に魅了されたこと、両親への献身、政治的な軋轢や兵役、恋愛に結婚生活、俳優としてのキャリア、ドラッグに溺れたこと、といった主要なできごとをくまなく抑えつつ、トム・パーカー大佐の功罪にまで話が及んでいるため「一本の映画に収めるには要素が多すぎる」感はいなめない。

少々くだくだしいと感じるところがあった。

 

 

トム・パーカー大佐はプレスリーを大スターに育て上げた凄腕プロモーターではあるものの、プレスリーの私生活までコントロールしていたこと、法外な金銭的搾取がプレスリーの死後ひろく世間に知られることになった。

そもそもが不法入国者であり過去の経歴にうたがわしい点が多いとされる大佐は、彼の生涯だけにテーマを絞って映画を一本つくれるほどの興味深い人物だ。

 

この映画では大佐の視点でみたあの時代という感覚で、われわれはプレスリーをながめることになる。

 

なので才能ある若者が勢いよくスター街道を駆け抜けていくすがすがしさ、というのではなく、まがまがしいものにいつも抑圧されている息苦しい感じが全編にまとわりついており、いせいのいい歌をうたうロックスターが、全然自由でも強くもなく、いつもみじめに踏みつけられていた現実に苦しくなる。

 

 

華々しくてエネルギッシュなステージ、その裏側は退屈でうんざりするほどカネの話、そんな緩急をうまく見せた映画であると思う。

 

 

エルヴィス・プレスリーはバナナの入ったピーナツバターサンドイッチが好物でした。