動物のお医者さん
白泉社「花とゆめ」という少女漫画雑誌に1987年から1993年まで連載されていた佐々木倫子氏による漫画作品。
第一話では高校3年生の主人公・西根公輝(にしね まさき。作中ではほとんどあだ名の「ハムテル」で呼ばれる)と友人の二階堂昭夫(にかいどう あきお)がひょんなことから「動物のお医者さん」を目指しH大学獣医学部に入学し、獣医として成長していく過程をえがく、丁寧な画風の淡々としたコメディである。
これを読んで獣医になったという読者もいるほど影響力のあるヒット作。
H大学獣医学部はつねに予算のなさを嘆いているが、作品連載時の日本はまだバブル景気。
毎回趣向をこらしたおしゃれなファッションのキャラクターたち、表紙イラストも文句のつけようがないセンスの良さ。
陽気で派手、怖いもの知らずともいえるポジティブさ、そんな当時の世相が淡々とした作風の本作品にさえ反映されているようである。
六年間という長期連載でストーリー、絵、ギャグいずれも「忙しくて荒れてしまった」という部分が見られず、安定したレベルの高さを保ったまま完走していて舌を巻く。
当時はペットの扱いはまだ手荒かったのだなと驚いてしまう(放し飼いが基本であることや、平気で犬にコロッケやジンギスカンなど人間の食べ物を与えているなど)
全国チェーン店や高層ビルとは無縁の、のどかとさえいえる昭和後期から平成初期の若者たちのキャンパスライフを堪能していただきたい。
ときどきネット上で使っている人を見かける「このカシオミニをかけてもいい」というギャグは作中ではほかにいくつかのパターンがあることがわかった。